株式会社環境・エネルギーナノ技術研究所

ノーベル賞級の発明

 1985年サッカーボール状のフラーレンが発見され、続いて、2004年に炭素原子の六角格子の平面状のシートであるグラフェンが発見された。その両方の発見者はいずれもノーベル賞を受賞した。(注:ノーベル賞受賞者・受賞理由の詳細はこちら(引用元:「ノーベル賞受賞者業績辞典」、2013年1月25日、日外アソシエーツ株式会社)

ナノカーボン素材

 (株)日本電気の上席研究員であった飯島澄男氏は、グラフェンシートが円筒状に丸まった形状のナノチューブ、続いて角(ホーン)状に丸まった形状のナノホーンを発見し、彼らのグループは日本の代表的な研究開発機関や防衛産業の支援を受け、製造方法を確立し、製造装置を作製する過程で関連特許を取得した。そして、ナノチューブ、ナノホーンの応用分野は広い。
 それらの功績から、業界や学界では飯島澄男氏は日本でノーベル賞に最も近い人物と言われている。
 しかしながら、前述したナノホーンの製造方法はレーザーアブシーション法と言われ、原理的には大量生産に不向きと言われ以下の欠点が指摘されている。
◆ レーザーを使用するので製造装置が複雑、高価で、大電力を消費する。
◆ 不活性ガスを封入した密閉容器内で炭素棒にレーザー光を照射してナノホーンを製造し、長い管路に滞留させて静電気による吸引や自然落下により超微細なナノホーンを回収するので、製造から回収までに時間がかかる。
◆ 炭素棒に強力なレーザー光を照射してナノホーンを製造するので、欠損が多く収率が良くない。
◆ レーザーアブシーション法で製造されるナノホーンは、そのままでは疎水性が強く、各種溶媒に対する分散性が乏しいため、分散性を化学修飾するための工程を付加する必要があり、製造コストがかさむ。
 そのためか、ナノチューブは国家が相当な規模でテコ入れして量産技術を開発し、その技術を基に2016年5月から民間企業の量産プラントが稼働して、ようやく高品質の単層ナノチューブが商品化される段階に入ったのに対して、現実的に他社のナノホーンが大量生産段階に入ったと言う兆候は認められない。
 加えて、ナノチューブには、そのナノサイズ(分子や細胞の大きさ)の針状の形状が細胞を物理的に損傷する可能性が研究者から指摘され、人体への発がん性の影響が懸念されており、厚生労働省は2016年3月31日に「労働安全衛生法第28 条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針の一部を改正する指針」と題する公示を発出して、多層カーボンナノチューブの一部の製品を癌その他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものと指定した。

ナノチューブの問題点

 総じて、人体への健康被害への懸念がなく、カーボンナノマテリアルにおいて水中アーク放電法によって安価で大量生産が可能であるのはアクアホーンである。
 しかしながら、炭素原子の六角格子の平面状のシートであるグラフェンが円筒状に丸まった形状がナノチューブ、続いて角(ホーン)状に丸まった形状がナノホーンであるから、もともとチューブとナノホーンはファミリーのようなもので基本的に性質は似ているが、それぞれの個性もある。であるから、ナノホーンとチューブは互いの応用分野、製品分野を棲み分けできるものの、人体への健康被害(発がん性)の懸念がない分だけナノホーンが有利である。
 例えば、ナノホーンの方が化学的安定性に優れている、つまり電気をためるのがナノホーン、電気を流すのがチューブということで、チューブは導電性材料例えば導電性インクなど半導体の回路に使用され、ナノホーンは放射線遮蔽剤(材)や電波吸収剤材に用いられるべきである。
 しかしながら、ポリプロピレン、ポリエステルやポリカーカーボネートなどの高分子系材料に添加する場合、チューブはその形状から曲げや引張に強く、ナノホーンは衝撃や耐摩耗性に優れるため、一方において、高分子系材料にナノホーンとチューブを同時に添加した場合、それらの複合効果、相乗効果により高品質の材料が得られる。
 さらに、チューブ系の導電性材料にナノホーンを導電性調整剤として配合することもできる。
 総じて、ナノホーンは、その特性から見てチューブと応用分野、製品分野を棲み分けできるとともに、ナノホーンとチューブを同時に複合して用いれば、それらの長所、短所を相互補完できるという、真に便利な素材である。